小説〜辿り着いたは精神病院?

資産家のお嬢様で良家の奥様。仕事良い夫、多くを持てる彼女は死の願望に取り憑かれていた。前を向き強く生きていた瞳はもう暗闇しか映さない。警告:小説と現実の区別がつかない人は絶対読まないで下さい。

シーン4-7 "ホテルカリフォニア"


*警告*このブログには自殺、流血、薬物、飲酒、精神病治療のシーンが含まれます。自己の責任で対処できる方、小説と現実の区別がつく方のみ閲覧して下さい。







「椙山さ〜ん!!」

全自動のランドリーから乾いた洗濯物を取り出していると、また児玉さんに捕まった。

「乾燥機使ってるの?わあ、余裕、奥様なんだぁ!」
彼女は男みたいなガラガラ声を器用に裏返す。まるでおかまバーのオエネさんみたいだ。テンションの高さも。
「え、あの?」
「椙山さん、毎日でしょ?乾燥機。私なんてもったいからぁ、いつも外干し!」大きな体に合った大口で言い放った。
「. . . そうですか?」
嫌み、言われてるのかな?この人の眼、笑って無いみたいだし。なんか、怖い。
児玉さんは距離を詰め、頭一つ分上から私に迫って来た。
「ねね、椙山さんのお宅は商売か何かやってるの?奥様なんでしょ?」
「いえ、サラリーマンですけど、、」余計なことは言いたくなかった。
「あれ?満員かな?」洗濯袋を下げた人がヒョイと現れた。人の良さそうな白髪の年配男性だ。
手に持った洗濯洗剤を掲げて見せる。
「空いてます」私は急いで言った。「私、終わりましたので」
「曽根さぁんだぁ!」児玉さんは大声で新たな登場人物を歓迎した。
「ああ児玉さんは、洗濯終わったの?」
「うんん、これからぁ!」
私はこれ幸いとランドリー室から逃げ出した。「失礼します」

冷や汗が背を伝っていた。
全身から力が抜け、廊下から部屋までの距離をヨタヨタと歩いた。
その日の夕食は、食べるフリをすることさえ出来なかった。




私は服のままそっと体重計の上に乗った。

デジタル計の数字が表示される。
「はい、椙山さんは44.2キロね」看護婦さんはメモを取った。ショートボブに切りそろえた四十を過ぎ位の彼女は、優しいけれどハキハキとした口調で言った。

今日は月に一度の血圧と体重測定の日だった。
他の人は既に終ったらしくロビーでおのおのカップを手に寛いでいた。輪になってお菓子を食べてる姿も合った。今日も日差しは強く外はうだる程に暑い。いつも散歩に出る人達も、少し日が傾くまでは室内で涼んでいるだろう。

「椙山さん、身長164センチで44キロ?痩せてるの前からなの?」
「. . . はい」私は俯いた。
「スタイル良くて羨ましいけど、もうちょっと体重増えると良いね?お食事は食べられてますか?」
「は、い. . . 」
嘘を見抜かれた気がして、私は眼を合わせられなかった。


我家は代々長身骨太筋肉質の家系だ。
弟達も、父、叔父、祖父、みな肩幅の広い大男だった。唯一母似で華奢な金剛でさえ、身長こそ174センチしかないけれどその細身は意外なほど筋肉質だ。
私も例外ではない。学生の頃は体脂肪の少ない所謂アスリート体型と言われた。体重は55キロと大目だけれど体脂肪率は15〜6パーセントと男性並みだった。
三十を過ぎるとさすがに昔通りとはいかないけれどそれでも体脂肪は20パーセントを維持、スポーツジムでは理想体型と判定された。

昨年ジーンズの緩みで初めて筋肉が落ちてしまったことに気づいた。
でも、先月の尾大病院入院時には50キロ近くあったはず?いつの間にこんなに痩せていたのだろう?

鏡なんてロクに見ないし、丸顔なので頬は痩けない。まったく気づかなかった。



ああ、結婚指輪が緩いんだった。今朝も顔を洗っていて泡で滑り落としそうになった。
あらためて自分の手を見る。骨ばかりゴツい手の甲には肉が無く、筋が浮いていた。

この手、見覚えがある?
ああ、死ぬ前のママの手。


ふっくらとした白い手は、ベッドの上で骨と皮ばかりになった。






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Author:kyorori
登場人物、治療内容、医療機関は全くのフィクションです。病院やお薬について、仮にも参考にできたらな?と訪れて下さった方には申し訳ありません。ゴメンナサイ。

葛藤や苦しみは限りなく本物で、この小説を自己発散の場として使っています。実話より小説の方がより表現しやすいと考えての行動で、もし少しでも理解して頂けたら幸いです。

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