小説〜辿り着いたは精神病院?

資産家のお嬢様で良家の奥様。仕事良い夫、多くを持てる彼女は死の願望に取り憑かれていた。前を向き強く生きていた瞳はもう暗闇しか映さない。警告:小説と現実の区別がつかない人は絶対読まないで下さい。

シーン1-4 "ブラッドバス"


*警告*このブログには自殺、流血、薬物、飲酒、精神病治療のシーンが含まれます。 自己の責任で対処できる方、小説と現実の区別がつく方のみ閲覧して下さい。









精神科の待合室に車椅子で入った。

受付の看護婦さんは私の顔を見ると労るような眼差しを向けた。昨夜運ばれ治療を受けたのは、私のかかりつけ医の勤務するこの病院の救急外来だったらしい。

何か院内で連絡のやり取りがあったのだろうか?

目眩が酷く辛そうな私の様子を見かね、看護婦さんは毛布を持って来てくれた。長椅子に横になるよう優しく促す。

初夏だというのに私は震えていた。ジーンズに長袖の厚手トレナーを着ているのに。
袖口から覗いた手首の包帯と爪の間にこびり付いた汚れが眼についた。

今の私は、普段とは違った意味で人目を引いていた。
血でゴワゴワしたロングヘアーは濡れタオルで拭き取ってきたけれどバサバサ。お手洗いの鏡でチラっと見た顔は、血の気を失い普段は出来たことのないクマが目の下にある。愛嬌があって可愛いと言われる顔も不細工にむくんいた。
TPOにこだわったコーディネートを常に心がけている私が、今は祐輔のビーチサンダルを履いていた。

きっとみすぼらしい病人そのもに見えるんだろうなぁ. . . 艶やかなロングストレートをなびかせ颯爽と歩いてたのは何時のことだろう?
私の164センチある身長に、9センチのヒールを履けば軽く小柄な男性を追い越した。
そしてかならず背筋をしゃんと伸ばして歩く。顔を真っ直ぐ上げる。どんな場所に出ても堂々と物怖じしない。

理想を体現していた留璃子はどこへ行っちゃった?

「椙山留璃子さん」神経質な声が私の名を呼んだ。
祐輔は慌てて車椅子を取りに行った。不器用に壁にぶつけ、扉にぶつけ、精神科の待合室に大きな音が響き渡る。
「歩くから大丈夫」私は祐輔に声をかけた。「え、でも」かすかに眉をしかめる彼に「ありがとうね」と言い残し、一人で診察室に入った。

「お願いします」「お願いします」
医師との機械的なやりとり。
まだ30才前だという高橋先生は痩せ過ぎでいつも疲れた表情をしていた。髪には白いものが混じり、私より年下とは思えない。精神科の医師として患者の人生の重みまで背負っているかのようだ。
. . . だけどソレが表情に出るようじゃまだまだ青い。って、この人はずっとこんなキャラで押してっちゃうのかね。
ぼんやりと考える。先生が私を観察してる時、私も先生を観察していた。

「で、死のうと思ったの?」高橋先生はカルテに顔を伏せ、そっけない口調で聞いた。
「はい」「今も、死にたいと思ってる?」「はい」私が答えると、高橋医師がチラっとこちらを見た。
一瞬目が合うと彼は何の感情も表さず言う「どちらか、入院しますか?」「いいえ」先生がもう一度こちらを見る。
と、看護婦さんに扉を開けてもらい、祐輔が診察室に入って来た。
挨拶をする彼を遮るように、高橋医師が切り出す。「ご主人はしばらく奥さんのそばにいられますか?」「え?あ、はい」とっさに答える祐輔に医師が軽く頷く。「じゃ、そうして上げて下さい」

話はついた。


その後は外科外来だ。
車椅子で移動していることを冷たく指摘された。
「歩けないほど痛むワケ?」中年の医師が私の足首の包帯を指差しながら言う。
私は面倒だと思いながらも「いえ、目眩がするので」と答えた。
言い返されて露骨に溜め息をつく医師がぞんざいな手付きで包帯を替えて行く。足首と肘の内側の傷から血がジクジクと滲んでいた。
「破傷風の注射打った?」前置きもなく医師は聞いた。
「. . . 覚えがありません」
私の答えに医師はまた溜め息をつきカルテをめくる。「あ、済んでるんだ。じゃ、要らないから」看護婦に指示した。

. . . . . . . . . カルテに書いてあるなら聞くなよ。答え間違ってたら医療ミスの始まりじゃない?


外科の外待ち合いで処方を受け取った祐輔は怪訝な表情をした。
「高っ!. . . アレ、負担10割?間違ってら!ホラ、瑠璃見てよ」
確かに本人負担額10割になっていた。
「直してもらおう」祐輔は受付のお姉さんに処方を渡し、保険証があるので自己負担は3割だと指摘した。
医療事務員らしい女性は処方を見ると、私に視線をやりキッパリ言った「自傷行為の場合、保険は適用されません」彼女は祐輔に視線を移し「自傷行為の場合は全額本人負担なんです」と、やや強い口調で告げた。

一瞬、周囲の物音が途絶える。

悪いことをしたんだ。
悪いこと?
そうだ私が悪い。悪いんだ。
悪い?
悪いなら、居なけりゃいいのに。
存在しなきゃいいのに。
周りに迷惑を掛け、、迷惑?
迷惑なんて嫌なのに。
消えたかっただけなのに。
消える?逃げたかった?
逃げれらなかった?

失敗、したんだ。




« シーン1-3 "ブラッドバス"|Top|シーン1-5 "ブラッドバス" »

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://kyororinovel.blog31.fc2.com/tb.php/4-4ef9b18e

Top

HOME

Author:kyorori
登場人物、治療内容、医療機関は全くのフィクションです。病院やお薬について、仮にも参考にできたらな?と訪れて下さった方には申し訳ありません。ゴメンナサイ。

葛藤や苦しみは限りなく本物で、この小説を自己発散の場として使っています。実話より小説の方がより表現しやすいと考えての行動で、もし少しでも理解して頂けたら幸いです。

名前:
メール:
件名:
本文: 

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

<%plugin_first_description>

<%plugin_first_content>

<%plugin_first_description2>