小説〜辿り着いたは精神病院?

資産家のお嬢様で良家の奥様。仕事良い夫、多くを持てる彼女は死の願望に取り憑かれていた。前を向き強く生きていた瞳はもう暗闇しか映さない。警告:小説と現実の区別がつかない人は絶対読まないで下さい。

シーン7-2 "ルーズユアセルフ"


*警告*このブログには自殺、流血、薬物、飲酒、精神病治療のシーンが含まれます。自己の責任で対処できる方、小説と現実の区別がつく方のみ閲覧して下さい










「私、色々考えました」
もう何度目になるだろう?臨床心理士の多岐川先生との面談は足掛け三年に渡っていた。
「自分の中でけじめを付ける必要があるんです。これ以上、結論を持ち越すことはできません」
真摯な眼差しを向ける多岐川先生に、私は告げた。
「今、今が、その時なんです」



バイトを転々としていた金剛が、プログラマーとして正社員契約を結んだと聞いたのはその週末だった。
「コン、おめでとう!」私は声が震えた。「コン、良く頑張ったね」
高校をドロップアウトしてから自力で大検をとり、専門職まで得たのだ。小さかった弟が、あの末っ子の金剛が. . . 私は胸がいっぱいだった。
「よせよ留璃子ちゃん!これから、これからだって!」金剛は照れくさそうに言った。
「コンちゃんC言語独学だって?すっげぇ!!」祐輔が興奮しように言う。
「すっげぇ人手不足らしくてさぁ?今のとこ、5ヶ月くらいになるかな?雑用やりながらプログラムやらしてもらってたんだけど」へへへと頭をかく。「社員契約にしてくれって社長に言われた時はびっくりしたぜ?マジぃ?ってカンジ」
ひとしきりプログラム用語が飛びかう会話を金剛と祐輔は交わした。

「コン。朱実さんから電話あったよ」
私は金剛が二十歳で結婚そして一年足らずで離婚した女性の名前を挙げた。
「彼女、再婚するんだって?子供も、新しい旦那さんの籍にいれるって?」
「うん。そう言ってた」
「え?コンちゃんの子供を養子にしちゃうの?」祐輔は驚く。
「違う、朱実さんの子は、コンの子供じゃないのよ」私は訂正する。
「留璃子ちゃん知ってたの?」金剛は意外そうな顔をした。
金剛と知り合った時、朱実さんは既に妊娠していた。
朱実さんを庇い、八ヶ月の早産で産まれたと周囲には言っていたけれど、4800グラムもあったので内心変だと思っていた。
先日再婚の知らせをくれた朱実さんの口から、自分たちの子と周囲に告げていた少年は、実は金剛の実子で無いと告げられた。それを承知で今まで養育費を払ってくれていた金剛に、心から感謝していると電話の向こうで彼女は泣いていた。

「朱実さん、幸せになると良いね」私は心から願った。
「そうだなぁ」金剛は優しい目をした。「幸せな家庭、作れりゃ良いよな」
「今度はさ、コンちゃんの番だね?」
祐輔に混ぜっ返されて金剛は舌を出した。
「二度も結婚すりゃ十分!もう間に合ってます!」



黒曜は離婚調停を申し立てた。
紗香さんはガンとして離婚を拒み、黒曜の不義を理由に強い対立の姿勢を見せた。双子のマヤちゃん、マイちゃん、産まれたばかりのマオちゃんの為にと、私に弁護証人に立って欲しいと言って来た。
私は首を横に振った。
『やっぱり留璃子姉さんも、身内が可愛いのねぇぇ!!』紗香さんは激怒し、私を裏切り者と呼んだ。
暴言に、反論しようとした祐輔を私は止めた。
紗香さんには言う権利がある。
私達には、彼女の心の痛みを甘んじて受ける義務がある。



琥珀は勤務先の医院や、病院の夜勤をを全て辞めた。
国内での手続きを終えフランス行きの飛行機に乗り込む琥珀はサバサバとした明るい表情をしていた。まるで憑き物が落ちたみたいだった。
見送る私達にとても穏やかな笑顔を見せた。
「じゃあ、行って来るからな」
「. . . 琥珀」私は胸が詰まった。
「泣くなよ?留璃子姉ェ」
「琥珀君、気をつけてね!」祐輔は私の肩を抱きながら琥珀と握手を交わした。
「琥珀兄ィ、連絡しろよぉ!」金剛は軽い調子で言う。「くたばるんじゃねーぞ?」
「あっはは!俺がそう簡単にくたばるかっての!」
ジーンズにニット、片手にデイパックというカジュアルな服装をした琥珀は、最後に大きく手を振ると姿を消した。
しばらく動けずに泣いていた私の肩を、そっと祐輔が支えてくれた。
ソッポを向きながらも側でじっと待っていてくれた金剛がポソリと呟いた。
「国境なき医師団、か. . . 」



梅から桜へと季節が移ろうという時期、そのセレモニーはささやかに行われた。
『桜梅(おうめ)公園』
公園の出入り口にある小さな石碑に刻まれた名前。
地下鉄駅が開業して急に発展したこの地域の、僅かな憩いの場所として造られた公園。なるべく元の形で梅や桜の木が残された、お爺ちゃんの公園。
「ママは. . . 」私は空を見上げて行った。
春の柔らかい空気には仄かな土の匂いがする。
「ん?何、瑠璃?」
「ママは、お爺ちゃんとお婆ちゃんと、一緒に居るのかな?」
「もちろんだよ」祐輔は優しく言うと、握った私の手を引き寄せた。「ずっと一緒だよ」

道路を行く車が途切れた瞬間、遠くの空でヒバリの鳴く音が聞こえた。



            < END >





拍手やコメント頂けたらものスゴクものスゴク嬉しいです!!!

« シーン7-1 "ルーズユアセルフ"|Top|シーン7 "ルーズユアセルフ" 後書き »

コメント

梶 恵さん、コメントありがとうございます!!

ずっとお付き合い下さったお陰で、くじけず終了を迎える事が出来ました。ほんとうにありがとうございます!!

新たな旅達のイメージに合わせるため、春先に間に合わせようと必死でした。だからこそ、それぞれの登場人物の視線が前を向いていると、梶さんに感じて頂けてスゴク嬉しいです!!

不在の間まで応援して下さって、ありがとうございました!!

蛍さん、コメントありがとうございます!!

とうとう終わりました(笑)足掛け五ヶ月掛かりました〜。応援して下さってありがとう
ございます!!とても励みになりました!!


自分なりのハッピーエンディングを目指しましたつもりだったんですけれど??登場人物達にとっては、ゴールではなくスタートですね。

ここ最近は不在で自動更新していましたのに、読んで下さってコメントまで頂けて、
とっても嬉しかったです!!

ああ、とうとう終わってしまったのですね(涙)
余韻の残る素敵なラストシーンに引き込まれてしまいました。
でも本当はもっともっと続きが読みたいです!
もし機会があったら、是非また瑠璃子さんや祐輔さん、皆に会わせて下さい。
素敵な小説、本当にありがとうございましたm(_ _)m

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://kyororinovel.blog31.fc2.com/tb.php/100-b5008dad

Top

HOME

Author:kyorori
登場人物、治療内容、医療機関は全くのフィクションです。病院やお薬について、仮にも参考にできたらな?と訪れて下さった方には申し訳ありません。ゴメンナサイ。

葛藤や苦しみは限りなく本物で、この小説を自己発散の場として使っています。実話より小説の方がより表現しやすいと考えての行動で、もし少しでも理解して頂けたら幸いです。

名前:
メール:
件名:
本文: 

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

<%plugin_first_description>

<%plugin_first_content>

<%plugin_first_description2>